空想・科学・特異点 

Science Fiction Singularity

(in vitro)

 

生化学系の論文を読むと、実験条件の部分にイタリック表記で(in vitro)という注釈が付いていることがあります。

 

in vitro は「試験管内で」という意味で、その実験が試験管内で行われたことを示しています(同様に(in vivo)と書かれていた場合は「生体内で」という意味になります)。

 

学生の頃は読み飛ばしていたのですが、今になって「あれってそういえば……」などと思い起こすことがありました。

 

in vitro=試験管内

 

ガラス管という完全に閉鎖された環境内で繰り広げられる連鎖反応。

 

その状況は何かを連想させます。

 

それは何か? 

 

「地球」です。

 

国際宇宙ステーションがあり、宇宙空間に滞在できるとはいえ、いずれはまた地球に帰らなければなりません。

生物は今のところほぼ地球内に留まっていると考えられ、それは(in earth)な状況だといえるでしょう。

 

 

そこで気になってくるのが「地球上の生物も(in vitro)な生物と同様な状況なのではないか?」ということです。

 

試験管内で微生物を培養した場合、どのような経時的変化を見せるのか?

 

「試験管内における微生物の増殖具合」をグラフに表したものを状況別に分けると以下のようになります。

 

「誘導期」=微生物は分裂せず、環境に馴染んでいる段階

対数期」=分裂を始め、対数的に爆発的に増殖する

「静止期」=増殖数と死滅数が拮抗し、見た目上増えも減りもしない

「死滅期」=増殖数よりも死滅数の方が多くなり、絶滅に近づいていく

 

試験管内のみでエネルギーを採り(食事)、試験管内に代謝・排泄し、試験管内で死んでいく。

 

浄化や補充のないまま、閉ざされた環境に留め置かれた場合、微生物のみならず、他のどのような生物でもこのような経過を辿るのではないでしょうか。

 

まだまだ地球には余裕があるように思えます。

 

しかし、それは極めて(in vitro)な環境と酷似していることを、忘れないようにしておかなければならないのかもしれません。