空想・科学・特異点 

Science Fiction Singularity

貨幣制度の終焉もしくは変移についての考察①

2015年、大晦日の更新です。

 

今回は現在の「貨幣制度」がこれからどのように変わっていくのか、についてSF的に考察してみたいと思います。

 

大きく分けて

①貨幣のあり方が変わる

貨幣というシステム自体が終わる

というふたつのパターンが考えられます。

 

この「②貨幣というシステム自体が終わる」については、それに替わる制度を編み出さない限り発生しないと考えられるので、なかなか起こりづらい事象だと思われますが、「①貨幣のあり方が変わる」に関しては、すぐにでも出来そうなので、こちらから考察していくことにします。

 

現在のお金の流れは、簡略化すれば次のような感じになっています。

 

中央銀行 ⇔ 市中銀行 ⇔ 一般企業 ⇔ 従業員

 

市中銀行はお金の引き出しに備えて「現金」の現物を用意したり、貸し出しに備えて「数字」を用意します。

 

この「数字」とは、「現金という現物を伴わない資本の移動を数字で表したもの」を意味しています。

 

例えば20億円必要な時は、中央銀行に「20億貸してくれ」と言い、審査が通れば、中央銀行の帳簿に「-20億円」、市中銀行の帳簿に「+20億円」と記載され、資本が「数字上」移動したことになります。

 

この形は市中銀行から一般企業に対する貸し出しの場合も同じです。

 

運営資金のために企業が1億円必要な時は、市中銀行に「1億貸してくれ」と言い、審査が通れば、市中銀行の帳簿に「-1億円」、企業の帳簿に「+1億円」と記載され、資本が「数字上」移動したことになります。

 

さらに、企業間の取り引きでも、銀行通帳を介した振り込みや小切手、手形等による現金以外の資本の移動が一般的で、ここでも「数字だけ」が移動する形になっています。

 

また、さらに、企業の従業員の給料も銀行口座振り込みによって「数字のみ」が移動する形になっています。

 

お金が現物化するのは末端の部分、「個人が必要に応じて引き出す」または「小売り業者が『お釣り』として用意する」時に限られているのです。

 

 

そこで……

 

これを「現物のモノの売買においても数字のみの移動にしてしまう」のです。

 

スーパーで食料品を買う時も、ホームセンターで工具を買う時も、車を買う時も、電化製品を買う時も、全部「数字の移動」。

 

カードをかざして「ピッ」とするだけで、支払いが完了するのです。

 

現在はクレジットカードや携帯・スマホの支払い機能で似たようなシステムが構築されていますが、これを銀行のキャッシュカードで代用すれば、面倒な手続きや手数料の重複取りもなく、簡単に「数字のみ移動するシステム」が出来上がります。

 

「現金が一切出てこない世界」

「現物の貨幣が必要のない世界」

が、あっという間に完成するのです

 

 

この世界が、これからもっと近づいてくると感じさせる事象も存在しています。

 

例えば、ネット上の取り引きです。

 

通販やオークションで買い物をした時、支払いを「銀行口座振り込み」にする。

オンライン口座で振り込み、商品が手元に届く。

 

「現金」が一切登場することなく、取り引きが完了しています。

 

 

また、「歴史的な流れ」を見てもその形が見えてきます。

 

上の方で挙げた「お金の流れを簡単に表したもの」の中の「一般企業 ⇔ 従業員」の部分、給料にあたる支払いに関して、現在は口座振り込みによる「数字のみ」の移動ですが、以前は「現金」で渡されていました。

 

給料袋に明細書と紙幣・硬貨が入れられた形で、手から手へと渡されていたわけですが、これが今は個人の通帳上に数字で表されるという形に変ったのです。

 

企業・個人間に登場していた「現金」が、「数字」に置き換わったのです。

 

この流れがさらに進めば、当然、その末端にあたる「モノの売買時における現金取り引きが数字化する」と予測できるでしょう。

 

 

この

「貨幣を末端まで数字化した世界」

「現金が存在しない世界」

のメリットについては次の更新で考察したいと思います。

 

 

さて……

書いているうちに年が明け、2016年になったわけですが

 

「貨幣が存在しない世界では、初詣のお賽銭はどうするんだろ……」

 

などと考えつつ……

新しい年、新しい世界、明けましておめでとうございます―――