前回の更新「誰かが儲ける時、他の誰かは奪われている」で書いたこと、
「儲けている誰か」が貯め込んだり、どこかに隠したりすることで「その儲けに協力した側の存在」は力を失っていきます。
皮肉なことに、そのことによって、今度は「儲けていた側」がその儲け先をなくして、破綻していくのです。
……という内容に関して、同様なことが書かれた文章を見つけたのでリンクしておきます。
ニューズウィーク日本版の2016年3月11日の記事です。
タイトルが「共和党エスタブリッシュメントはなぜ見捨てられたのか」というもので、元米労働長官のロバート・ライシュ氏が記した「An Open Letter to the Republican Establishment(共和党エスタブリッシュメント(保守本流)への公開書簡)」が載せられています。
そのリンク先です。
以下はその一部抜粋です。
転載ココから ↓
共和党エスタブリッシュメント(保守本流)への公開書簡
ロバート・ライシュ(元米労働長官)
君たちは、自分の莫大な財産をGOP(共和党の愛称。Grand Old Partyの略)に注ぎ込んだ。目的は、節税と補助金。規制緩和と知的所有権の保護。市場シェアを上げて製品を値上げすること。労組を骨抜きにして移民を低賃金で働かせること。住宅購入者や学生債務者には容赦なく自己責任を追及しながらも、自分の会社が破綻したときには公的資金で助けてもらうこと。そして、自分たちのインサイダー取引を見逃してくれる裁判官を任命することだ。
君たちはあらゆる手を尽くして途方もない富を築いた。おめでとう。
だが今日は、君たちに残念な知らせがある。君たちはいま大きな代償を払わされている。今後、その負担はいや増すばかりだろう。
第一に、いま君たちの会社の大半は、リーマンショックに端を発した「グレート・リセッション(大不況)」前のような急成長はしていない。売り上げも伸び悩んでいるし、株価も弱含みだ。
それは君たちが、自分の会社で働く従業員が消費者でもあるということを忘れたせいだ。君たちが賃金カットで消費者のお金を搾り取ってしまったので、君たちが売りたい商品を買う余裕がなくなってしまったのだ。
個人消費はアメリカ経済の70パーセントを占めている。だが、実質購買力で見ると、標準的な家計の収入は2000年より減っている。
利益の大半は、君と君の同類の懐に入った。荒稼ぎをする一方で、そのほんの一部しか使わない君たちの下へ。これが経済、そして君たちにとって、大きな災いをもたらすことになる。
転載ココまで ↑ www.newsweekjapan.jp より
アメリカの労働長官だった人の書簡ということで、その内容は真に迫っているといえるでしょう。
ここに書かれている内容から、ふたつのことを感じとれます。
ひとつは、アメリカの労働長官も認めるほど、資産の偏りが大きくなってきている、ということです。
書簡には「賃金カットで消費者のお金を搾り取ってしまったので、君たちが売りたい商品を買う余裕がなくなった」と書かれていますが、この部分はまた別の見方ができるかもしれません。
「賃金カットで消費者が力を失い、そのせいでモノが売れなくなる」
ということは事実かもしれませんが、それは
「もう既に儲ける先がなくなってきていて、賃金カット自体を儲け先にしている」
ために発生しているのではないか、ということです。
もしそうだとすれば、これは資本主義における投資と回収のシステムがうまく作動していないということを意味しています。
うまく作動していないどころか、そのシステムを「壊している」行為ということにもなります。
その会社や社会全体に余裕があるうちはよいのですが、それが限界まで達した時どうなるのか、気になるところです。
また、この書簡から感じるもうひとつのことは、アメリカの労働長官ほどの地位に立つ人がこういう認識にあって、対策を講じてきたはずなのに結果が出ないものなんだな、ということです。
やはり賃金に関わる問題は、労働者側はもちろん、政策によっても変革しづらいということなのかもしれません。
これらに見られる資本主義の歪な面―――儲けようとすればするほど、儲ければ儲けるほど、その儲け先が縮小していき、格差が広がっていく―――は、資本主義が洗練されればされるほど表出してくるはずです。
それがさらに拡大していく時、どのような対策でそれを乗り切っていくのか、興味のあるところです。
もしかすると、それこそが資本主義の正しい姿だ、と開き直るのかもしれませんが。