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Science Fiction Singularity

資本主義がその形を変える時 ──── それは2021年かもしれない

 

2015年の4月1日から、このブログを始めましたが、その最初期のエントリに「資本主義の終わりとその次に来るモノ」というものがあります。

 

以下はその一部抜粋です。

(※冒頭の「それ」という代名詞は「資本主義」を指しています。)

 

個人的には、もうそれは終わりを告げていて、あとはどこへ向かうのか、行き先を探しているだけのような気がしています。

 

終わっている、という判断に至ったのは「ライボー不正操作事件(LIBOR=London Inter-Bank Offered Rate)」が明るみに出た(2012年)ことからです。

 

詳しい内容は省きますが、要は「量り売りの店が秤を細工してごまかしていた」「ギャンブルの胴元が賭け率を操作して不正な利益を得ていた」というようなことが、金融市場の中でも、最重要視されているような指標で行われていた、ということのようです。

 

これをやられてしまうと、いったい何を基準にしていいのか、金融に関するありとあらゆる価値の信用を失ってしまいます。ギャンブルなら(中毒患者以外は)もうそのテーブルには着けません。

 

(中略)

 

ところが、世界は以前とまったく同じように動いている。誰もそれについて触れない。

 

なぜなのか?

 

答えはひとつですね。代わりがない。

 

資本主義に代わるものがないために、それが綻んで終わっていたとしても使い続けなければならない、ということなのでしょう。 

(引用終わり)

 

 Wikipediaによるライボーの解説は

LIBOR(ライボー、London Interbank Offered Rate)とは、ロンドンにおいてインターバンク取引で資金の出し手から提示される金利のことで、ロンドン銀行間取引金利とも呼ばれる」

というものです。

この指標は主に資金調達コストの基準として用いられることが多いとのことで、これを操作することによって、自社で扱う金融商品から不正な利益を得ることができるのだそうです。

 

この不正操作事件の捜査は、2017年現在も続いていて、それがどのように収束されるのか興味深いところです。

 

 

……しかし……

不正が明らかとなり、改革されたとはいえ、まだ何らかの抜け道を生み出せそうなこの指標は、今現在も使われています。

 

「秤を細工できるのなら、あらゆる富を簡単につくれるよな……」

 

そう感じるものが、不正がわかった後もずっと使われている不条理。

 

釈然としないものの、代わりがないから使い続けるしかないのか……

 

と思っていたらなんと。

 

 

2017年7月27日、イギリスの金融行動監視機構が

「2021年までにLIBORを廃止し、不正操作できない取引を元にした新たな基準を策定する」

ことを発表しました。

 

そのニュース記事のリンクです。

www.bloomberg.co.jp

 

以下は記事内容の転載です。

 

転載ココから ↓

 

ロンドン銀行間取引金利LIBOR)は、350兆ドル(約3京9000兆円)余りの金融商品のグローバル指標金利として、これまで利用されてきた。この役割を2021年末までに終わらせると英監督当局は決定したが、スキャンダルで傷ついたLIBORに代わる指標への移行を金融業界が急ぐ過程で、かなりの混乱が起きることになりそうだ。

LIBORは過去数十年にわたりバンカーやトレーダーの手によって、住宅ローンや不動産ローンから法人融資、学生ローン、金利デリバティブ金融派生商品)に至るまで、あらゆる種類の金融契約に組み込まれてきた。このため、新たな取引の基準となる別の指標金利を見つけるだけでなく、既存の契約について再交渉を行う必要も出てくる。LIBORを基準にプログラムされているコンピューターシステムも全面的な更新作業を強いられよう。

 

ロンドンの証券会社ミント・パートナーズで資本市場・オルタナティブ資産の責任者を務めるビル・ブレーン氏は「金融関係の法律専門家にとって、おいしい仕事になるだろう。LIBORスワップや融資、変動利付債(FRN)の業界を支える金融インフラの一部だ。契約書に何が書いてあるか誰もがチェックする必要に迫られ、LIBORベースの契約に関係する誰にとっても頭の痛い問題となろう」と話す。

 

イングランド銀行(英中央銀行)は、ポンド建てのデリバティブと関連する金融契約で用いる安全性の高い代替指標金利として、ポンド翌日物金利加重平均(SONIA)をスワップ業界の作業グループが推奨したと4月に発表した。バーグレイズ・インベストメント・バンクのフランソワ・ジュルダン最高コンプライアンス責任者(CCO)が同グループの座長を務める。

 

みずほインターナショナルの欧州金利戦略責任者ピーター・チャットウェル氏(ロンドン在勤)は「市場は代替指標がどうなるかについてガイダンスを必要とするだろう。ボラティリティーの高まりや、場合によっては短期的に流動性の低下を招くことが予想される」と指摘した。

 

原題:Libor's Uncertain Succession Triggers $350 Trillion Headache(2)

 

 

BloombergLIBOR廃止でこれだけの不安ー代替金利や再契約、システム更新より     

                              

 

転載ココまで ↑ 

 

記事を読むと、LIBORという指標が、想像以上に我々の生活(特に欧米において)に影響を与えていたことに気付かされます。

 

また

「350兆ドル(約3京9000億円)余りの金融商品のグローバル指標金利として利用されてきた」という部分にも驚かされます。

 

3京9000億円???

 

そのおおもととなる指標がごまかされていた?

 

 

LIBORという指標が廃止になるのは当然ということでしょう。

 

ただ、記事中にあるように、それに代替する指標がまともに機能するのかどうか気になるところです。

 

もし、

その代替指標がうまく機能しなかったら……

LIBORと同様に不正操作可能なものだったとしたら……

そして……

指標移行期のドサクサに紛れて新たな不正取り引きが為されたとしたら……

さらに、いまだ見つかっていない不正が明らかになったとしたら……

 

 

想像とか観測とかを通り越して

リアルに資本主義は終焉に向かうのかもしれません。

 

なにしろ、

3京9000億円ぶんの金融商品の「基礎」や「土台」が揺り動かされるのです。

 

それがもしも崩れ去ったとしたら……

 

2021年前後、我々はこれまで経験したことのない激動の中に身を置く ──── ことになるのかもしれません。