空想・科学・特異点 

Science Fiction Singularity

それは既に始まっている

 

このブログでは、資本主義や共産主義といった経済・社会システムの「代わりとなる何か」を模索しています。

 

その「何か」にあたるものとして提唱しているのが「与配主義」です。

 

共産主義においては規制と独裁、

資本主義においては競争と奪い合い、といったような形で作られている仕組みを

与配主義においては「与え合い」によって成り立つよう設計されています。

 

資本主義と共産主義下では

「お金」を介した価値の交換によって経済が営まれますが、

与配主義下では

お金ではなく「順番決定ポイント」を用いて価値の交換を図ります。

 

順番決定ポイントは

「人や社会に対してモノやサービス等を与えたり配ったりした人」が公的機関から与えられる指標で、お金の代わりとなるものです(与配主義下では「外国交換用のお金」のみが存在し、一般的な意味でいう「お金」はなくなる)。

 

人や社会に対して、より多く与えた個人や会社が、より多くの順番決定ポイントを公的機関から与えられます。

 

新製品や限定品、コンサートのチケットなど、それを手に入れるために順番待ちが生じるような場合、人はポイント数に応じてソート(並べ替え)され、ポイント数の多い人から順にそれらを入手できます。

 

また、銀行や病院、役場等で順番待ちが生じるような場合も、ポイント数の多い人から処理されていく、という形になります(昇順や降順の量には限度が設けられる)。 

 

順番決定ポイントのやり取りは、現金のように実物(紙幣、硬貨)を伴うことなく、すべて電子的に処理されることになります。

 

順番決定ポイントは、現金のように個人同士の間を直接やり取りすることが出来なく、公的なサーバー等を通して(ブロックチェーン等の技術を用いて)その入出がすべて記録されます。

 

このことより

貨幣経済上で発生するさまざまな問題 ──── 経済のみならず犯罪等も含む ──── をほぼなくすことができます。

 

順番決定ポイントの管理は 

ひとりにひとつずつ割り当てられた口座のみを使用することになります(脱税やへそくり等ができない)。

 

買い物する際は

「お財布マイナンバーカード」を用いて支払いを行います。

 

お財布マイナンバーカードは、キャッシュカードにおける「ICデビットカード」のような側面を持ち、生体情報(DNA、指紋、掌紋、声紋、虹彩等)を登録することになります。

 

買い物等でカードを使用する際は、登録された生体情報とその都度照合することにより、盗難や紛失時の不正使用を心配する必要がなくなります。

 

登録された生体情報は、犯罪の捜査にも用いられ、未解決の事件が格段に少なくなることが期待されます。

 

国内居住者は、その国籍を問わず全員登録することになります。

 

さらに、国外から訪れている旅行者も「パスポートと紐づけされたお財布マイナンバーカード」をその場で(もしくは事前に)作り、生体情報を登録、それを用いて買い物等の支払いを行うことになります(自国のお金を入金するとその国のお金(順番決定ポイント)に換算されるプリペイドカードのような扱いとなる)。

 

よって、国内にいる人全員が「生体情報を登録したお財布マイナンバーカード」を持っていることとなります。

 

 

以上が、

資本主義・共産主義に代わる「与配主義」と

貨幣制度に代わる「順番決定制度」の概略を簡潔にまとめたものです。

 

 

 

さて……

 

どこまでが本気で

どこからがオカルト・トンデモ・エンターテイメントなのでしょう?

 

 

「いや、普通にそんなの実現しないだろ笑」

「どんなディストピアだよ」

 

確かに

そう感じるかもしれないのは、書いてる本人も否めないのが事実ですが←

上に描かれたようなアイデア(idea)は

すべて荒唐無稽かつ夢物語といった類のものなのでしょうか?

 

 

 

以下の記事は、2018年4月7日付けのニューヨークタイムズのものです。

www.nytimes.com

 

 

 全編、英語表記なのですが

「In Deep」というブログサイトに全文訳がありましたので、そちらも参照させていただきます。

 

indeep.jp

 

記事に当たる部分を抜粋します。

 

転載ココから↓

インドの「ビックブラザー」は、人々の食品購入、携帯電話、そして銀行取引の際の指紋スキャンを要求する

これまでにない範囲での識別システムを構築しようとしているインドで、国民13億人の人々の指紋と目、そして顔をスキャンする作業が行われている。スキャンされたこれらの認証データは、社会保障データから携帯電話までのすべてのデータに接続されることになる。

このプログラムは、「アーダハール(Aadhaar)」と呼ばれている。

自由主義者たちはこの状況を、ジョージ・オーウェルの小説に出てくるビックブラザーのようだと述べ、懸念を表明している。

また、このインドの技術は、他の多くの国に対して国民の追跡方法のモデルを提供する可能性がある。インドの最高裁判決では、このIDシステムはデジタル時代におけるプライバシーの憲法上の権利を規定する独自の法的問題を提起している。

デリーに住む30歳の環境コンサルタントであるアディーダ・ジャー(Adita Jha)さんは最近、プログラムに登録したが、それはとても面倒なものだったという。

このプログラムの登録では、まず顔の写真を撮影する。そして指紋を採取し、目の虹彩の図像を撮影する。ジャーさんは、データのアップロードに3回失敗して、4回目にやっとうまくいった。こうして、ジャーさんのデータは、すでにプログラムに登録されている11億人のインド人の「国民データベース」に加わることになった。

ジャーさんによると、このプログラムに登録する選択しかないのだという。インド政府は数百におよぶ公共サービスにこの認証データを利用し、多くの私立学校の入学試験にもこのデータが必要になる。

また、銀行口座の開設にもこのデータが必要だ。このプログラムに登録していないと、いろいろなことができない。ジャーさんは、「プログラムに登録していないと(インドでは)生活が止まるようなものなのです」と言う。

 

このインドの技術は世界中の政府に市民を監視する新しいツールのアイデアを与えた。中国政府は、人々の顔の認証とビッグデータを使って人々を追跡する方法を展開している他、中国では、さらに国民の日常生活の監視も目指している。

英国を含む多くの国では、国民を監視するための固定カメラを導入している。

しかし、インドのこのプログラムは、バイオ・メトリックデータ(生体認証)の大量の収集とあらゆるものをリンクしようとする独自の取り組みとなっている。それは、乗車券の購入、銀行口座の開設、年金、児童への食糧配給など、あらゆる分野でこのデータが必要とされるものとなっている。

この試みについて、インド政府が国民すべてに対して前例のない規模で情報を取得するのではないかと懸念を抱く人たちも多い。

このような批判に対して、インドのモディ首相とトッププログラマーたちは、このプログラム「アーダハール」こそが、インドの未来へのチケットであり、このプログラムにより国の腐敗を減らし、そして文字の読めない国民たちをもデジタル時代に導くものだと述べている。

国民の監視から政府の福利厚生プログラムの管理に至るまで幅広い用途に利用されているこのプログラムは、他の国や地域でも関心を集めている。インド政府によると、スリランカも同様の制度を計画しており、英国、ロシア、フィリピンがこのシステムを学んでいるという。

この「アーダハール(Aadhaar)」という言葉は、英語で「基本となるもの(foundation)」という意味だ。当初、政府はこのプログラムは、詐欺を減らし、政府の福祉プログラムの提供を改善することを試みていただけだった。しかし、2014年にインド人民党が政権をとって以来、「デジタル・インド(digital Indeia)構想を推進してきたモディ首相は、その野望の範囲を大幅に拡大していった。

今、インドの貧しい人々が政府のコメの配給を得るためには店頭で指紋をスキャンしなければならない。年金生活者たちは、年金をもらうたびに指紋をスキャンしなければならない。中学生たちは、身分証明書を提出するまで、毎年の絵画コンテストに参加することができない。

インドの一部の都市では、生まれた新生児は両親が署名するまで病院を離れることができない。病気で指や目を負傷している人でも、指紋や虹彩スキャンを登録しなければならないと言われている。

さらに、モディ首相は、インドの全国民に、プログラムの自分のIDを携帯電話(スマートフォン)と銀行口座にリンクするように命じた。インドのいくつかの州では、人々がどこに住んでいるかを地図に明記するためにこのデータを使用している。また、企業では、採用希望者の過去を調べるためにこのIDを使用している。

モディ首相は、今年1月の演説で、「アーダハールは、インドの発展に大きな力をもたらしている」と述べた。政府当局者は、納税等での不適切な利益を除外したことなどにより、すでにアーダハールによって94億ドル(約1兆円)が節約されたと推定している。

しかし、これに反対の立場を取る人々は、インドの最高裁判所に、このプログラムがインドの憲法に違反していると申し立てている。これまで、少なくとも30件が最高裁判所に申し立てられた。裁判所は広範な聴聞会を開いており、この春に判決を下す予定だ。

インド政府は、何白万人もの人々が身分証明書を受け入れていない国では、普遍的な身分証明書が不可欠であると主張する。

同システムを監督する政府機関会社を率いる米ミネソタ州のエイジェイ・B・パンデー(Ajay B.Pandey)氏は、「インドの人々こそが、このプログラムで最大の利益を得ているのです」と語る。

企業はまた、この技術を使用して事務処理を合理化している。

インドの銀行は、かつて口座開設の申請者の住所について銀行員がその家まで行って確認していた。しかしアーダハールによってオンラインから銀行の支店で指紋をスキャンするだけで完了することができるようになった。

通信プロバイダーのリライアンス・イオ(Reliance Jio)は、アーダハールの指紋スキャンを利用して、携帯電話のSIMカードを購入するために政府が要求するIDチェックを実施している。これまではサービス開始に数日かかっていたが、これにより、即座にサービスを有効にすることができるようになった。

とはいえ、アーダハール・システムは実用的かつ法的な問題も提起している。

システムの中核である指紋、虹彩、顔のデータベースは、セキュリティ上で安全であるように見えるが、しかし、少なくとも210の政府のウェブサイトから、名前、生年月日、住所、親の名前、銀行口座番号、アーダハール番号などの数百万人のインド人の個人データが流出した。

流出したデータの中には、グーグルで観単に検索できるようになっていたものもあった。

アーダハールは政府から義務づけられているが、しかし、インドの農村部では、アーダハールの手続きをするために必要なインターネット接続と登録手続きで問題が起きている。

生涯でそのようなものと縁が無く、また、文字が読め書きできない人たちにとって、アーダハールの手続きは非常に困難だ。実際、最近の調査によると、ジャカルカ州の世帯の20%が、アーダハールに基づく検証の下で食糧配給を得られなかった。(※訳者注/インドの識字率は70%程度で、農村部はさらに低いとされています)

 

これらの問題から、一部の地方自治体は公共の利益のためにアーダハールの使用を縮小した。そした2月には、デリー地域政府は、アーダハールによる食糧配給を停止すると発表した。

プログラムの責任者は、いくつかの問題は避けられていないが、当局が現在問題を解決しようとしていると語っている。指紋や虹彩スキャンの代わりに、顔認識が追加されたのもその中でのことだという。

アーダハールを監督する政府組織のパンデー氏は以下のように語った。

「すべての国民の情報を持っている国家は(他に)存在しません。インドは、アーダハールが登場するまでは、何億人ものインド人のひとりひとりを特定することは容易にできることではありませんでした。しかし、今は違います。」「もし、その人が自分のIDを証明できない場合、公民権は剥奪されます。つまり、その人は存在しないのと同じことになるのです」

 

In Deep「「登録しない者は存在しないも同然」という13億人を管理&監視するインドの国民総生体認証プログラムが稼働。その規模と適用範囲は中国を上回る」より

 ↑転載ココまで

 

 

既にそれは

この世界に実際に現れているのです。

 

個人の各種生体情報をIDとして登録することによって、これまでと比べ物にならないくらい円滑に公共・民間サービスを行えるシステム ──── は、もう既に出来上がっているのです。

 

事実は小説より………なんて言いますが、

まさにそのようなことが実際に起きているのです。

 

 

この記事の中で特に注目に値するのが

 

「 モディ首相は、インドの全国民に、プログラムの自分のIDを携帯電話(スマートフォン)と銀行口座にリンクするように命じた」

 

という部分と

 

「インド政府によると、スリランカも同様の制度を計画しており、英国、ロシア、フィリピンがこのシステムを学んでいるという」

 

という部分です。

 

前者は、ほぼ「お財布マイナンバーカード」が出来上がりつつある、ということを、

後者は、それが複数の国に広がろうとしている、ということを表しています。

 

 

この「Aadhaar」についてもう少し詳しく調べてみると、

 

「Aadhaar」という単語はヒンディー語の音写らしく、訳中では「アーダハール」と表記されていますが、現地(チェンナイ)では「アーダール」とか「アドハー」と呼ばれているようです。(インドと日本の架け橋に俺はなる「Aadhaar番号とやらを取らされる件」より)

 

また、この「Aadhaar」というカードは、

「インド固有識別番号丁(UIDAI)が2010年に導入した国民ID制度に基づき、インド全国民を対象に12桁の固有番号を付与し、国民一人一人の名前、住所、性別、生年月日、顔写真、目の虹彩、手の指紋(10指)を関連付けた、生体情報付き国民IDカードのことです。

導入から6年半の2016年末の時点で国民の95%が取得し、2017年12月にはインド国内居住者である在留外国人も取得が義務付けられました。」

「インドの経済政策の狙い(3)」より一部抜粋)

 

 

この「Aadhaar」は、ここに挙げた以外のさまざまなサイトでも「インド版マイナンバーカード」として紹介されていて、そういう意味においても、そこに生体情報を与え銀行口座と紐づけするという点において、まさに「インド版お財布マイナンバーカード」にあたるといえるでしょう。

 

 

 

インドにこのようなシステム(Aadhaar)があることを知ったのは先々週(2018年6月中旬)のことでした。

 

そのことを知らないまま、

 

「未来の買い物のシステム ──── キャッシュレスな形で効率よく支払いを済ます(商品とお金・順番決定ポイントを交換し合う)にはどうすれば……」

 

という命題に、

 

マイナンバーカードに生体情報を入れICデビットカード化し、銀行口座と紐づければ非常に効率の良いシステムになる」

 

といった解が得られ、

さも自分が発見したかのようにドヤ顔で提示したのですが←(キャッシュレス経済のシステムを考えてみる

それはもうインドで何年も前に出来上がっていたのですね笑。

 

 

でもここでめげずに←

逆に、

インドのモディ首相やそのブレーンが「与配主義」や「順番決定制度」というアイデア(idea)を聞いたらどう反応するのか、知りたいところでもあります。

 

 また、

「キャッシュレス経済のシステムを考えてみる」というエントリの最後に

「日本のキャッシュレス化は世界に比べて遅いとされているが、お財布マイナンバーカードを産み出すことによって、一気に世界のキャッシュレス化の頂点に立てる」

といったようなことを書いていますが、

それが既にインドでほぼ完成に近づいているということから、今後はインドがキャッシュレス化の先頭に立つだろう、ということをSF的に予想しておきます。

 

 

……以上、

この一連の流れ(今後「こうなる」「こうすればよい」と予想・提唱したものが既存のものだった)が

少々こっ恥ずかしかったりもするのですが←

それはまた大きな可能性を感じさせることでもあるのです。

 

 

というのは……

 

このブログでは「SF予想」として、それまでの一般的な常識を排し、

 

「世界はこうなっていくに違いない」

「こうならなければおかしい」

 

といった形を模索してきたわけですが、それでもそのような記事に「オカルト」や「トンデモ」といったタグをつけなければなりませんでした。

 

そうしないと、その内容のあまりの突拍子なさ加減に、その実現性を考察してもらえないどころか、一瞥(いちべつ)されただけで読まれもしない可能性が高く………

 

「オカルトだ」とか「トンデモだろ」と感じとられる前に、

それを先にタグとして記しておくことで「エンターテイメント的な何かでもあるのか」といった捉え方をしてもらうことで最後まで読了してもらえるかもしれない、と考えたからでした。

 

 

しかし、

そのようにして「オカルト」だとか「トンデモ」だとしなければならなかったことが、現実に実際に起き始めている。

 

想像や予想を超えて、リアルな現実として形成され現れてきている。

 

これは、

ブログの記事や内容をオカルトだとかトンデモだと認識すること自体が ──── トンデモな行為だった

ということを意味しています。 

 

また、

実際に今回のエントリの導入部分(ニューヨークタイムズの記事より前の部分)

 

──── SF予想だったり、想像だったり、空想だったり、妄想だったりを駆使して形作ったもの ────

 

のうち、

だいたい5分の1くらい(お財布マイナンバーカードのくだり)は、既に現実化しているのです。

 

 

ということは……

 

 

インド版マイナンバーカードが「お財布マイナンバーカード」として本当に現出してきたように、

 

資本主義や共産主義が「与配主義」に代わり

貨幣制度が「順番決定制度」に代わる

 

 ──── そんな世界が、意外なほど近くに存在している

と言えるのかもしれません。