空想・科学・特異点 

Science Fiction Singularity

逆累進・時限消滅型 ベーシックインカムというアイデア

 

このブログでは資本主義の代わりに与配主義を、

貨幣制度の代わりに順番決定制度というものを提唱しています。

(それぞれの詳しい中身は「与配主義」や「順番決定制度」でまとめられた記事をお読みください)

 

さて

今回は

与配主義における「ベーシックインカム」について考察してみたいと思います。

 

ベーシックインカム(basic income)とは

「最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を定期的に支給するという政策。基礎所得保障、基本所得保障、最低生活保障、国民配当とも、また頭文字をとってBI、UBIともいう。世界中で限定的なパイロットプログラムも始まっている。」(Wikipediaより)

というもので

フィンランドアメリカのアラスカ州などでは既に試験的に導入されているそうです。

 

資本主義というシステムを簡単に捉えると

企業にしろ個人にしろ

「儲けを出して資産の増加を図る」

ということに尽きると思うのですが、

資産におけるその「増減」を考えた時

「収入が変わらない(増えない)なら、なるべく資産を減らさない(使わない)」

という手法も有効となるでしょう。

 

増加させるのは難しいけれど、減らさないことにより資産を防衛する、といったような姿勢です。

 

 

現在、

日銀により

大規模な金融緩和が為されていながら

「所得は増え、貯蓄も増えているのに、物価はなかなか上がらない」

といった現象が見られるそうですが、

(この「所得は増え」の部分が、どうも厚生労働省による捏造だったらしいことが最近の報道で明らかになってきていますが、「所得が実際には増えていない」のであればなおさら、なことなので、ここではそのまま表記します)

その現象は

資本主義というシステムの中においては当然のように予想されることでもあります。

 

供給側の「モノを売って儲ける」ことによる資産形成と

消費側の「お金を使わない」ことによる資産形成が

完全に競合するため、

同じ「資産形成」を目指しながら

片方の目的を推進しようとすると

もう片方の目的が抑制されるという

二律背反な状態が発生するからです。

 

これは

「資本主義における初めからわかりきった問題」

であり、

いずれ必ず顕在化することが明らかなわけですが

いまだに解決できないままとなっています。

 

そこにおいて

「個人の収入を(半強制的に)増やすことで消費を促し、その二律背反性を解消する」

といった形を模索するのは当然のことであり、

それを満たす事象として

ベーシックインカム」のような制度が提唱されるのは理に適っていることといえるでしょう。

 

 

しかし。

 

しかし、なのです。

 

そのようにして

各個人にお金が供給されたとしても

それはやはり

「貯蓄」や「投資」といった形で

「資産形成」の一部に組み込まれていく

のは必然です。

 

なぜなら

それこそが資本主義における最適解(資産の増加を目指すこと)となるからです。

 

もし

現代にまだ江戸っ子気質のようなものが残っていて←

「こちとら江戸っ子でぃ。宵越しの金は持たねんだょ」

などという人が大半だったとしたら、

ベーシックインカムが消費の拡大に大いに貢献し

さまざまな問題が解消されていくことでしょう。

 

しかし、

現在、教育が行き渡り

「資本主義の中においてはどのように行動すれば成功へと繋がるのか」

みたいなことが、本やテレビ、ネット等で盛んに取り上げられている時代においては、そのような効果は期待できません。

 

そこにおいては

ベーシックインカムを貯蓄や投資に充て、より多くの資産を生み出していこう」

といった動きが出てくるのは当然であり、

そのことが

せっかく投入した資本(ベーシックインカム)が

「消費市場」に対しては有効的に働かない一因となる のです。

 

また、

ここで

少し話題がズレますが

 

現在執られている政策として

ベーシックインカムに似たものとして生活保護という制度があります。

 

生活保護

「経済的に困窮する国民に対して、国や自治体が、健康で文化的な最低限度の生活を保障する公的扶助制度である。」(Wikipediaより)

というものですが、

この制度にもいくつか問題点が存在していて

そのうちのひとつとして

「労働者の収入よりも被生活保護者の収入の方が多額となる」といった現象がまま見られるそうです。

 

このような形のシステムでは

・労働意欲が著しく減じられる

・不公平感が高まる

といったデメリットが生じてしまいます。

 

 

………ということで

 

以上のような

資本主義におけるシステム上の根本的な問題点を

与配主義では解決していくことになります。

 

与配主義においては

生活保護を廃し

ベーシックインカムに統一することとなります。

 

そのための財源はあふれるほどあるので

(「税金(年金、健康保険、生活保護、 etc)が必要のない世界がやってくる  その仕組みとは?

図解 お金に代わる順番決定ポイントの流れ

図解 お金に代わる順番決定ポイントの流れ その2 ──── 与配主義における輸出がもたらすもの」等参照)

財源の心配はまったく必要ありません。

 

ただ、

ひとつ留意しておかなければならないのは

与配主義におけるベーシックインカムはお金(に代わる順番決定ポイント)とは別個のものとして扱われることになる

ということです。

 

 これは

与配主義の理念

「他の誰かや社会に対して、より多く与えたり配ったりした存在が、より多くの順番決定ポイントを得られる」

という点に対して矛盾しないためです。

 

順番決定ポイントは「他者に与えた人や企業に対して付与されるポイント」であり、

ベーシックインカムは「他者に与えられない人に対して付与されるポイント」である、ということになります。

 

よって

ベーシックインカムポイントは順番を決定する要素には組み込まれません。

 

順番を上げることはできないけれども、待っていればそのモノやサービスを手に入れることができる、ということになります。

(食料品その他、生活必需品はその限りではなく、順番関係なしに手に入れることができます)

 

そして

それをどのように供給するのか?

については、わかりやすいように図にしてみます。

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 図1)逆累進型ベーシックインカム支給額

 

与配主義および順番決定制度では

お金の代わりに順番決定ポイントを用いるのですが

ここではより理解しやすいようにお金(円)で表すことにします。

 

与配主義下のベーシックインカム

収入に応じた配給率が決められ

収入が多くなるほどその支給額が少なくなっていき

年収1000万円でゼロとなります。

 

なぜ年収1000万円でゼロにするかというと

「人が感じる幸せと収入には一定の相関関係があるが、年収1000万円を超えるとその関係性が薄れる」

というデータがある、ということからです。

news.yahoo.co.jp より

(為替の関係で額そのものが多少変動して捉えられるようです)

 

つまり、その年収に達している人に対して、さらなる収入の補填をしても幸せに結びつくわけではない、ということを考慮しての形、ということです。

 

ここで

図をもう一度見てみます。

 

ベーシックインカムの最大値として

仮に毎月15万円の支給がある場合、年収で180万円となります。

(支給額は暫定値)

 

ということで

収入がまったくない人(順番決定ポイントをまったく稼げない人)は

ベーシックインカムが満額支給され、年収が180万円になります。

 

年収が10万円くらいに見込める人(予定納税的な見方で)は

ベーシックインカムの支給額が年179万円となり

収入と合わせて189万円の年収となります。

 

年収が50万円くらいに見込める人(予定納税的な見方で)は

ベーシックインカムの支給額が年170万円となり

収入と合わせて220万円の年収となります。

       :

       :

 

……といったように

収入額が増えるにつれて

ベーシックインカムの支給額が減っていき

800万円でゼロに近づき、1000万円で完全にゼロとなります。

 

このように

与配主義におけるベーシックインカム

収入が増えるほど支給額が減っていく、という

逆累進型の給付率となります。

 

これは

現在の資本主義下における消費税が

逆累進型であることの逆になるという形です笑。

 

 

そして

年収に合わせて支給されたベーシックインカム

年収自体を合わせた

実質的な年収を表したものが図2になります。

 

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 図2)収入とベーシックインカムを合わせた年収

 

収入がゼロの人は

ベーシックインカムが満額支給され

年収は180万円となります。

 

収入が800万円付近で支給額はゼロに近づき

合計収入の傾きが緩やかになっていきます。

 

収入が1000万円で支給額はゼロとなり

ベーシックインカムの恩恵がなくなります。

 

 

このように

稼いだ分だけベーシックインカムの支給額は減っていくのですが、年収とベーシックインカムの合計で見ると、稼げば稼ぐほど合計収入が多くなることがわかります。

 

資本主義下の生活保護では

生活保護者の方が労働者より収入額が高くなる、といったような辻褄が合わないような現象が発生したりするそうですが、

ここにおいては

稼ぐことによってベーシックインカムの支給額が減るとはいえ

その「稼ぎ」+「ベーシックインカム」の合計額は

自分より多額のベーシックインカムをもらっている人よりも多くなることが確定しているため、前述のような矛盾が発生しません。

 

このことによって

資本主義下の生活保護行政における不公平感的なものが一掃されることとなります。

 

 

 

「個々の支給額の複雑な計算はどうするのか?」

「全員に一律に支給した方が手続き的に楽なのでは?」

 

それが……

 

また うまいことできてまして←

 

「与配主義におけるベーシックインカムは、年収に応じて計算される」

 

……といったこの形

 

どこかで見たことありませんか?

 

そうです。

税金(所得税)です。

 

これまでの更新において

与配主義では「税金がまったく必要なくなる」ということが示されて来ました。

 

そのことは

税務署の仕事が全てなくなる、ということを意味しています。

 

ということで……

 

これまで

「税務署だったもの」が

ベーシックインカムの支給額を計算していく、ということになります。

 

なにしろ

それが「税」か「ベーシックインカム」かの違いだけで

行うこと(収入に対する計算等)は

まったく同じなのです。

 

これほどふさわしい存在もないといえるでしょう。

 

そして……

その行う行為(計算)は同じでありながら

中身はまったくの正反対、真逆に変化するのです。

 

これまで(資本主義・共産主義「払え!」

 

これから(与配主義)「あげるっ!」 笑

 

暗黒の時代から

光の世界へ ──── 

 

 

このことは

「資本主義や共産主義から与配主義へと代わることが、どのような意味合いを持っているか」

ということの ひとつの現れといっていいでしょう。

 

ということで……

これまでは

税務署であったものが

与配主義下では

ベーシックインカムになります。

 

なんなら

ベーシックインカ務署でもいいです←

 

はい。

 

ということで

・労働者よりも被生活保護者の収入が多くなる現象

・収入に対する逆累進という複雑な計算をどうするのか?

 

といった問題が

以上のことにより完全に解決されました。

 

 

次に

ベーシックインカムを投入しても、消費市場に対しては有効的に働かない可能性についてはどうするのか?

ということを考えてみたいと思います。

 

与配主義では

一人にひとつのみの口座が与えられ

そこですべての資産を管理することになります。

 

その取引内容はブロックチェーンによって記録され、

そのポイント(順番決定ポイント、ベーシックインカムポイント等)が

いつ・どこから・どこへ・どれだけ

出し入れされたかが全て把握されることになります。

 

そのことにより

投入されたベーシックインカムポイントがどのように利用されたかが、すべてわかることになります。

 

ということで……

以上のようなことを踏まえ

 

与配主義におけるベーシックインカム

「支給後60日以内に使われなかった場合、全額回収される」

という規定が設けられることになります(日数は暫定値)。 

 

つまり

支給されたら2ヵ月以内に使い切らないとなくなってしまう

のです(貯金ができない)。

 

具体例で考えてみると

4月1日に15万円支給されたぶんは

5月31日まで使い切らないとならない

ということになります。

(ここでは理解しやすいように月計算とします)

 

よって

最もベーシックインカムを貯められるのは

4月1日に支給されたものを4月中は一切使わず

5月1日に支給されたものと合わせた時の30万円

ということになります。

 

このような

「支給後60日以内に使われなかった場合、全額回収される」

といったルールを持ったベーシックインカム

時限消滅型ベーシックインカム(時限ベーシックインカム

と名付けることにします。

 

この

時限消滅型ベーシックインカムの特徴は

投入されたら

その期限が来る前に使われることにより

市場に対して投入されたものが即市場に対して効果を発揮する

ということになります。

 

前述の通り

ベーシックインカムポイントは順番決定ポイントとは別個に扱われる」

ということにより

ベーシックインカムポイントは順番を決めるようなもの(新製品や人気家電製品等)には利用できない、ということになります。

(人気が落ちた後は利用可能となる)

 

また、

順番を決めるようなものでなくても

手に入れるまで時間がかかってしまうようなもの(在庫のないものや手作り製品等)には利用しづらい面があります。

(2ヵ月以内に使い切らないと消滅してしまうため)

 

このことにより

与配主義におけるベーシックインカム

順番とは無関係に扱われる商品(食品をはじめとする生活必需品等)に対して利用されることが多くなると予想され、そのことにより「消費市場」に対して大きな効果として現れる、ということが期待できるのです。

 

また

ベーシックインカムポイントは

付与された時点では

順番決定ポイントとは別のものとして扱われるわけですが

使われる際は

「企業や個人が造った商品を購入する」という形を経ることにより

「メーカー及び製造者の順番決定ポイントを押し上げるもの」として機能することになります。

 

以上により

投入されたベーシックインカムポイントは

「2ヵ月以内に消費市場の順番決定ポイントを押し上げる」

ことになります。

 

さらに

「使われなかったぶんは全て回収される」ということと

「与配主義下では小売業が公的に行われる」ということにより

与配主義下のベーシックインカムで支給された金額は

2ヵ月以内に全額回収できる

ということになります。

 

与配主義においては

市場に対して100投入したものが

使われようが使われまいが

2ヵ月後に100回収されるのです笑。

 

これはなかなかインパクトのあることであって、

現在、日本においては

日銀によって「異次元の緩和」という金融政策が執られ

5年半で400兆円近くが市場に対して投入されたのにもかかわらず

まったくその目論見を果たせていないわけですが、

与配主義においては

緩和であれ引き締めであれ2ヵ月で即完璧な結果を出せるのです。

しかも

投入したものを全額回収できるという

入口と出口が完全に示された理想的な形で。

 

 

……はい。

 

ということで

与配主義に限らず

理想的なベーシックインカムの形が世界で初めて明らかにされました。

 

…………

 

資本主義君もだいぶ困ってるみたいだから

参考にしてくれてもいいんだょ? ←

 

 

……と言いつつも

具体的にはどうすれば?? なことかもしれないので……

 

今回のエントリの中身を

資本主義流にアレンジするとすれば

 

・逆累進性は取り入れない(税務署がまだ税の計算してるため←)

・時限消滅型ベーシックインカムマイナンバーカードで支給する

・それによりマイナンバーカードの普及率が飛躍的に高まる

・現時点ではブロックチェーン決済が普及していないため、その時限性および使用内容の全てを把握できないが、「次回支給時に残っているベーシックインカムは全額回収(相殺)される」といった形にすることにより、時限性が確立する

ベーシックインカムでは金融商品を買えないことにする

………というようなことにより

・投入された資本が消費市場に集中して還元され、経済が活性化し景気が上向く

 

……といった形になるでしょうか。

 

与配主義に比べれば

その効果は極めて限定的にならざるを得ないのですが、

それでも

現在において見られる

湯水のようにお金や時間を浪費しながら

まったく結果を出せていないような金融政策を

補って余りある結果をもたらしてくれることでしょう。

 

 

……というわけで

悲しく(もしくは怖く)なってくるほどに稚拙な金融政策などではなく、

緻密なロジックに裏打ちされた政策が為されることを切に願いつつ……

今回の更新を終わりにします。