空想・科学・特異点 

Science Fiction Singularity

与配主義における経済の流れや価値の捉え方について

 

与配主義とは

共産主義においては独裁と規制、資本主義においては競争と奪い合いによって構築されているシステムを、「より多く与えたり配ったりした存在(個人・会社等)が、より多くの利益を受けられる」というシステムにしたものが「与配主義」となる。

より多く与えた存在は、より多くの「順番決定ポイント」を公的機関から与えられる。

 

順番決定ポイントとは

これまでの貨幣が担ってきた役割を「順番を決めるポイント」に置き換えたものが貨幣制度に代わる「順番決定制度」となる。

何らかのモノを購入したり何らかのサービスを受ける際、順番待ちが生じるような場合、人は順番決定ポイントが多い順にソート(並べ替え)される。

順番決定ポイントが多い人ほど、さまざまなモノやサービスをより早く、より多く享受できることとができる。

このシステムは、資本主義や共産主義下の税金納付において、たくさん納めても何の見返りもない、という弊害を完全に克服する。

 

全員公務員制度とは

生まれたてホカホカの赤ちゃんから、寝たきり老人まで国民全員を公務員とする制度。

全員に対して給料的なものとして必要最低限の順番決定ポイントが与えられる。

 

それぞれのより具体的なイメージは

マルクス、ケインズ、そして…… 資本主義の次のシステムはこうなる! かも」でどうぞ

 

今回は、このブログで提唱された与配主義において、お金を用いずに行われる価値の交換やその流れについて考えてみたいと思います。

 

与配主義では「お金の代わりとなる順番決定ポイントが公的機関から与えられる」という形になるわけですが、その大本となる考え方や仕組みについて図解してみます。

 

まずは、現在の主要な形「資本主義」について。

資本主義におけるお金の流れは以下のようになっています。

図① 

f:id:sfsingularity:20170922094837j:plain

中央銀行は市中で循環されるお金の量を調整する

市中銀行は預金や中央銀行からの借り入れ等を用い、投資や貸付等により儲けを得ようする

・企業や個人事業主は銀行や投資家からの借り入れや株式・債権の発行によって得た資金を用い、設備投資や新製品・技術の開発、給与等に充て、それによって生み出されたものにより利益を得ようとする

・従業員は労働の対価として給料を得、市中銀行に預けたり投資したりする

……というようになっています。

 

この形の良い点は、それぞれ独立していることにより役割分担が明確である、ということでしょうか。

 

それぞれがきちんと自分の役割をこなせば、全体的にうまく機能していくことが期待されます。

 

しかし、逆に独立しているがために生じる弊害もあります。

 

それぞれが、少しでも多くのお金を手に入れるために

・しなくてもよい残業をしたりする(従業員)

・残業に対して正当な賃金を支払わない(企業)

・会計をごまかし投資家や銀行等から資金を得ようとする(企業・個人事業主

・返す当てのない個人や企業にお金を貸し出す(市中銀行消費者金融

などが行われ、それらの問題がそれぞれの独立性の中に隠され潜在化してしまう現象が発生するのです。

 

 

この他に、世界がグローバル化やIT化することによって、既存の対応では時間が掛かり過ぎてしまうという弊害も生じます。

 

これまでは比較的シンプルだった市場構成が変化し、世界を相手にしたり仮想化したものを相手にしなければならなくなるという、極めて複雑な状況が生まれています。

 

企業や市中銀行中央銀行が行う、さまざまな局面への対応や反応が、結果として目に見えて現れるまで、既存のやり方では追いつかない場面が増えてきているのです。

 

 

さらに、これらの独立性は、それぞれが得たものを「自分独自のものだ」という認識に捉われる原因にもなっています。

 

・たくさん労働して得たお金は俺・私のもの

・たくさん売って得たお金はこの企業のもの

・たくさん投資して得たお金はうちの銀行のもの

 

これは当然の認識です。

 

ですが、俯瞰して眺めてみれば、それらは「全体から貸し与えられたもの」が一時的にそこにとどまっている、ということに気づくはずです。

 

循環するからこそ増えていくはずのもの

おおもとを辿れば「全体」に行きつくはずのもの

 

この視点がないがしろにされていることにより、経済の流れがそれぞれの立場において淀んでしまうという現象が発生しているのです。

 

不思議な話ですが

資本主義のシステムそのものが、経済の流れを妨げる大きな要因を産み出しているのです(このことについては、後の更新でまた改めて触れたいと思います)。

 

 

さて……

次は「与配主義」についてです。

与配主義における経済の流れは以下のように捉えます。

図②

f:id:sfsingularity:20170922113343j:plain

資本主義において、独立して存在していた中央銀行市中銀行、企業、従業員、個人事業主等の垣根を取り払います。

 

このことにより、資本主義よりも極めて滑らかで即時的、なおかつ必要なところに必要な対策が執られることになります。

 

ここにおいては、そこに属する人や組織が産み出す「生産性」がトータルでまとめられることになります。

 

つまり、これまででいう「中央銀行のお金」も「市中銀行のお金」も「企業や個人のお金」も全部「ひとつの大きなサイフで勘定する」ようにするのです。

 

これを与配主義における「ひとつの大きなお財布理論」と呼びます。

 

これまでの資本主義では

企業の儲けはその企業の口座に

個人の所得はその人の口座に

あったわけですが

与配主義ではそれが全体(中央銀行的なもの)にまとめられ、個々の口座にはそれぞれの活動に応じた「順番決定ポイント」が付与されるのです。

 

この形は、これまでの資本主義で行われていたことの中間的な部分を排したものであり、それによって即応性や流動性が生まれるのです。

 

少し過激かもしれませんが

これは形的には100%の貸し付けと100%の税金ということになります笑。

 

実際には、順番決定ポイントを用いることにより、私的な資産を稼ぎに応じて構築できるので、これまでの貯金や金融資産の形成といったようなことを、今まで同様に行えることとなります。

 

重要なのは、資本主義下では極めて効率の悪い部分、時間なり労力なりが無駄になるような事象が排除されることとなる、ということです。

 

 与配主義の「ひとつの大きなお財布理論」の中では、不必要な事業や労働はなくなります。

 

資本主義下では「分配するための仕事」が無理やり創出されたりすることが多々ありますが(不必要な公共事業や下請け企業を作ることによる中抜き等)、与配主義下では、そういった存在は必要なくなります。

 

これは、最近話題になることの多い AI(人工知能)やロボットの発展との兼ね合いもとれています。

 

AI やロボットが進化することで、人間の仕事がそれらに置き換わることが確実視されていますが、そのことは「人間の稼ぎ口がなくなっていく」ということを示していて、不安を覚える人も少なくないことでしょう。

 

資本主義においては「市場内のお金を奪い合う」という形にシステムが設計されているため、企業も人もお金を獲得するために競争しなければなりません。

 

今までは、学歴や資格、経験といったものさしで人間同士能力を競い、仕事を獲得してきましたが、これからは人間以外、AI やロボットとも能力を競わなければならなくなることでしょう。

 

そのため、AI やロボットの出現は、多大な脅威を労働者に与えます。

 

もし、今の状態のまま、資本主義的システムのまま AI やロボットが広範囲に普及したとしたら……「21世紀のラッダイト運動」的なことが起こり得るでしょう。

 

 

これに対し

与配主義下においては「AIやロボットで出来る仕事なら、わざわざ人がやる必要がない」という認識となります。

 

このことにより

AIやロボットは

「人を不必要な労働から解放してくれるモノ」

「ひとつの大きなお財布をより膨らませてくれる存在」として、

事業者はもちろん労働者からも歓迎を受けるのです。

 

 

さて……

次は「全員公務員制度における財源について」です。 

 

全員公務員制度では、生まれたてホカホカの赤ちゃんや寝たきり老人など、生産性のない存在でも、生きているだけで公務員に認定され、必要最小限のポイントが付与されることとなります。

 

理念はわからないでもないが

財源はどうするの?

 

それは……

「ひとつの大きなお財布」から支給されることとなります。

 

「全体」から、必要最小限のものを全員に配る、という形になります。

 

全員に配ったら財源が足りなくなるのでは?

 

与配主義においては、所得税や住民税、消費税等の税金も、健康保険も、年金も、生活保護も一切必要ない(システムに既に組み込まれている)ので、資本主義のようにお金を徴収したり配給したりすることがありません。

 

現在の資本主義的システムにおいては、そのためのお金を徴収しておきながら

・年金の受給年齢が引き上げられる

・年金の額が減らされる

生活保護費が上昇している

・医療費の伸びが著しい

等の問題が山積しています。

 

しかし

与配主義においてはそういった問題が「一切」なくなります。

なぜなら、それらは「全体」の中で処理されるために、個別に問題として現れる前に処理できるからです。

 

「全員公務員制度」に似たような考え方に「ベーシックインカムbasic income)」(最低限所得補償)というものがありますが、財源の問題ひとつとっても、与配主義下における全員公務員制度の方が、将来に渡って安定的に運営できると思っています。

 

 

はい。

 

今回の更新で、与配主義における経済の流れや価値の捉え方が大雑把に示されました。

 

大富豪のサイフの中身も、もとをただせば「全体」に還ります。

 

これからの時代は、そのような認識が急速に広がり、『全体』の中で各種の問題を処理していこうという動きになっていくのではないのかな、とSF的に予想しつつ、今回の更新を終わります。