空想・科学・特異点 

Science Fiction Singularity

このブログの提唱内容と中国の政策がなんとなく似ている件

 

先日、興味深いニュースを見つけました。

 

それは、

「中国政府はこのほど、社会信用ポイントの低い国民に対して、高速鉄道や飛行機の利用を最長一年間禁止にする処置を、2018年5月1日から開始すると発表しました」

(原文まま)というものです。

中国、「社会信用度」の低い国民の鉄道・航空機利用を制限へ(訂正あり) より一部抜粋)

 

news.yahoo.co.jp

 

 

読んだ第一印象は

「コレって『順番決定制度』に似てるような……」

というものでした。

 

というのも

順番決定制度は

「自分以外の誰かや社会全体に対して貢献した人ほど、お金に代わる『順番決定ポイント』を与えられ、それによってさまざまな利益を得られる」

というものであり、

これはそのまま「社会に対する貢献度や信用度合」を測れるものだからです。

 

 

うすうす感じ取られている方もいるかと思いますが、このブログで提唱されることと中国政府が策定し実行する政策に、似通っているものが少なからずある、という印象を持つことがあります。

 

ただ、目指すものや場所がまるで違っているため、たとえシステム的に似ていたとしても、結果はまったく違ったものになります。

 

このことについては、また後で触れることにします。

 

 

さて、

この中国における「社会信用度」ですが、現在「商業的な分野における信用度」は、既にスコア化され評価されているそうです。

 

これは

「芝麻信用(ジーマ信用、セサミ・クレジット)」と呼ばれるサービスで、

アメリカで使われている「FICOスコア」や「Vantageスコア」といった「ローンの借り入れやクレジットカードの利用実態からスコアを算出し、利用可能額を変動させる」というサービスと同様なもので、

それ以外に、さらに、Alibaba等のネット通販の利用履歴もスコア化して、その人の信用度を評価する、というものだそうです。

 (「中国の社会信用スコア「芝麻信用」で高得点を狙うネットユーザー」参照)

 

japan.zdnet.com

 

 

FICOスコアは20年以上前から存在し、

融資における与信や、就職面接、入居審査にも活用されているそうなので

「ジーマ信用」中国の信用スコアが爆発的に普及したワケ(別名、芝麻信用・セサミ・クレジット)参照)

そのようなデータが、ローン以外のさまざまな場面における審査にも使えるということがわかっていました。

 

このことから、同様のスコアを用いれば、社会安定にも寄与することができるだろう、という判断から、中国では国策として社会信用度をスコア化することにしたものと推測できます。

 

中国の国務院が「社会信用度をスコア化する」と発表したのが2014年、「芝麻信用」が始まったのが2015年ということより、2014年あたりから、官民が一体となって「人の信用度合を生活における利便性に反映していこう」と活動してきたことがわかります。

 

そして、今年の5月から、政府による社会信用評価の一環として「信用の低い人は高速鉄道や飛行機に乗れない」という制度が始まるのです。

 

この「高速鉄道や飛行機に乗れない」という処置は、たぶん手始めに過ぎず、これからさらに生活にさまざまな影響を及ぼすような決まり事が発表されることでしょう。

 

 

ただ……

スコアの高低によって「これまで普通にできていたことができなくなる」ということを歓迎する人がいるでしょうか?

 

これまで通り、あるいは、これまで以上に便利な生活を営む(制限されない)ために、人々はどのような行動や工夫をしていくことになるのでしょう?

 

 

まちがいなく起こることとして ──── というか、上で挙げた参考リンク先の記事に既に書かれていますが ──── 「スコアを上げるためにはどうしたらいいのか?」といった「対策法」のようなものが探られることになるでしょう。

 

このことは結局、

「モノを手に入れるにはお金が必要で、そのお金をより多く手に入れるにはどうすればいいのか?」

と考察することと形的にまったく同じになる、ということを意味しています。

 

この形は

「欲する対象が『実際に欲しいモノ』から『お金や信用度』にすり替わる」

ことに繋がり、今までと同様、いや、それ以上に「本末転倒」な世界を生み出すことになるでしょう。

 

 

 「順番決定制度の順番決定ポイントも同じ形になるんじゃないの?」

 

 当然、感じる疑問です。

 

 

そこで、

ここからは

中国政府の「社会信用システム」と

このブログが提唱する「順番決定制度」の違いについて見ていくことにします。

 

 

まず、その違いの第一点として

中国版社会信用システムには「信用スコア」以外の「スコア」が存在している、ということが挙げられます。

 

信用スコア以外のスコアとはいったい何なのか?

 

気になるところですが

これは、ただ単純に「お金」ということになります。

 

つまり

「社会信用スコア」以外に、「お金」という「社会信用スコアを凌駕するほどの強力な存在がある」ために、社会信用スコアの価値が低められることになるのです。

 

このことをわかりやすく書けば

 

「お金で社会信用スコアを買えばよい」

 

ということになります。

 

それは当然犯罪行為とされるでしょうし、また、そのような贈賄ができないようにシステムが設計されるはずですが、たとえそうであったとしても、「お金」が存在している限り、なくならない形だと思われます。

 

 

その点、

与配主義における順番決定制度下では、お金が存在しません。

 

「順番決定ポイント」が貨幣の代わりとなるので、「それをお金で買う」といった行為自体が根本的にできないのです。

(効率は悪いのですが「モノやサービス自体で買収する」というのはあるかもしれません……)

 

 

以上のことにより

もし仮に、中国政府が「お金を廃し、社会信用システム自体を貨幣的に扱う」というような ──── かなりのトンデモですが「ない」とは言い切れない ──── 順番決定制度にその中身を寄せて来た場合、信用スコアの意味が格段に上がることになるでしょう。

 

 

「社会信用システム」と「順番決定制度」の違いの第二点は、「人の自由さ」について、です。

 

社会信用システムは「人の自由度を下げる」こと、および「それを恐れる恐怖心」によって人を縛るものであるのに対し、

順番決定制度は「人の自由度を上げる」ために存在している、という違いがあります。

 

このことは

社会信用システムが人に対して「罰」として存在し、順番決定制度が「楽」として存在するということを示しています。

 

もちろん、その「罰」が正当な理由で与えられる場合(現実的な罪に対して、等)は、まったく問題ないのですが、

政府が行うことの理不尽さや、政治家の腐敗、その他、体制に対する疑問点や不満を述べること等、

単なる意思表示の一環さえ、スコアの低下をもたらすものだとしたら、それは「人を不幸にしていく」システムだといえるでしょう。

 

今のところ、そのスコアは「社会的な不正」のみを判断する、というものらしいのですが、これが「政治分野における評価」にも及んでいくようだと、中国国内の人のみならず、世界中の人々が危惧するような「ディストピア」が現実のものとして現れてきてしまうのかもしれません。

 

 

 

……ということで

 

中国政府の「社会信用システム」とこのブログの「順番決定制度」の違いを見てきましたが……

 

それでは

なぜ中国の政策とこのブログで提唱することが似てくるのでしょうか? 

 

 

上で挙げたリンク(「ジーマ信用」中国の信用スコアが爆発的に普及したワケ(別名、芝麻信用・セサミ・クレジット)内の一部を抜粋してみます。

 

 

 「信用がある者への奨励は足らず、守らない者の支払うコストが低すぎる。(……)誠実信用の社会的ムードはいまだ構築されず、生産現場での大事故や食品安全事件もしばしば起きる。詐欺、ニセモノ製造販売、脱税、学術不正などの現象はいかに禁止してもとどまることはない」

 

 「現代市場経済は信用経済である。健全な社会信用体系の構築は、市場経済秩序の整理と規範化、市場信用環境の改善、取引コストの低下、経済リスクの防止をもたらす重要な施策であり、経済に関する行政の干渉を減らし、社会主義市場経済体制を整えるための切迫した課題である」

 

 

これは2014年に中国国務院が発表した「社会信用システム建設計画綱要」を日本語に翻訳したものらしいのですが(原文が読めない)、

 

ここで考えられているのは、経済という分野において「新たなシステム」を構築していく、ということのようです。

 

 

現在、共産主義は、経済という分野においては完全に失敗に終わり、どの共産主義国も資本主義的な様相を呈しています。 

 

ただ、その資本主義も完全ではないために、さまざまな問題が噴出しています。

 

その問題を解決していこう、とするのが、今回の「社会信用システム」の採用なわけですが、これは要は「共産主義においても資本主義においてもダメなところは直そう」ということです。

 

そしてこの

共産主義においても資本主義においてもダメなところは直そう」という部分が、このブログで模索していることと同じであることから、中国の政策とこのブログの提唱することが似通ってくる

のだと思われます。

 

中国では「経済分野における共産主義 」が失敗に終わっているために、「始めから資本主義の国」よりも、「共産主義はもちろん資本主義さえ超えた経済政策を構築していく」という点において、他の国よりもリードしていると考えられます。

 

その点が、このブログの「共産主義でもなく資本主義でもないまったく新しい経済システムを考える」ことと共通していることから、その中身も似てくる、ということでしょう。

 

 

 

……しかし、です。

 

これまで何度も触れてきましたが、

共産主義も資本主義も人の為には存在していない

共産主義と資本主義の失敗は目指すベクトルを間違えたから

共産主義国の最大の目的は

その体制を維持すること、です。

 

そこに、個人の幸せや社会の自由を慮る視点はありません。

 

 

対して与配主義です。

 

これは、以前の更新

共産主義と資本主義の失敗は目指すベクトルを間違えたから

でも触れましたが、

資本主義がお金を増やすこと、共産主義が体制の維持を最大の目的としているのに対し、与配主義は「ハッピーを増やしていく」ことを最大の目的にしています。

 

根幹がまったく違うがゆえに、行うことが同じようであっても、得られるものがまったくの別物になるのです。

 

目指すベクトルが最初から完全に違っているため、到達する地点もまったく違う場所になるのです。

 

 

「社会信用システム」は発達すればするほど、共産主義の体制が強固になります。

 

「順番決定制度」は発達すればするほど、「個人も社会もハッピーになっていく」のです。

 

 

人々がどちらを選ぼうとするのか

どちらが末永く続けていけるのか

 

考えるまでもなく

答えが見えてくるはずです。

 

 

 

……

本当は、以上でこのエントリを締める予定でしたが、少し気になってGoogleで「与配」という言葉を検索してみることにしました。

 

すると

2018年4月現在、

このブログのエントリがトップにいくつかと、見出しが意味不明な日本語のページがふたつ笑、あとはほぼ中国語(と思われる)ページのみが並んでいます。

 

「与える、配るシステム」だから、シンプルにわかりやすく

「与配主義」と名付けたのですが、

中国語の単語、もしくは文字の配列に「与配」という形があるのかもしれませんね。

 

いずれにせよ、こんなところにも不思議な関連性があって面白いですね笑