今回のエントリでは
「停電とキャッシュレス決済」の関係について、あらためて考えてみることにします。
今月9月4日、台風21号が近畿地方を通過しました。
それは、事前の予想通り非常に勢力が強く、関西国際空港や送電設備その他に大きな被害をもたらしました。
明けて9月5日の状況は
(毎日新聞 2018年9月5日 より)
というものでした。
この状況は2日後の9月7日になっても
(毎日新聞 2018年9月7日 より)
というように、完全には復旧されませんでした。
また、この台風とは別に
9月6日、北海道で胆振(いぶり)地方を震源とする震度7の大きな地震が発生しました。
ここでも停電が発生し、その規模は
(毎日新聞 2018年9月6日 より)
という記事中で触れられている通り、295万戸に及んだそうです。
2日後の9月8日時点で、その99%は解消されたそうですが
(読売新聞 YOMIURI ONLINE 2018年9月8日 より)
それでもまだ、平日のピーク電力に1割ほど足りない状況が続いていて、家庭や企業に「2割の節電」を呼びかけているそうです。
詳しく調べたわけではなく
単なる印象でしかないのですが、
日本においては
年に数回くらいの割合で
このような「自然災害による複数日以上に渡る停電」が発生しているように感じます。
現代社会において
電気のない生活というのは、かなり厳しいことが予想……というか、予想するまでもなくわかります。
明かり、としてはもちろん
さらにオール電化住宅では調理器具や浴用設備に至るまで、電力に頼っています。
その電気が一切手に入らなくなるわけですから、停電の怖さがあらためて浮き彫りになってきます。
このことは
これから普及・発展するであろう「キャッシュレス社会」に対しても、大きな影響を及ぼすことが予想されます。
実際、今回の北海道地震においても、そのような状況に陥った人がいたそうです。
【北海道震度7地震】キャッシュレス決済、災害に脆さ 停電でカードなど使えず
(産経ニュース 2018年9月8日 より)
北海道地震、電子マネーのキャッシュレス派がピンチ「現金を一切もっていない」
(exciteニュース スマダン 9月6日 より)
これらの事例は
このブログで事前にSF的に予想していたことが、そのままの形で実際に起こった、ということを現しています。
(ここで、あえて現金(キャッシュ)の良さを再確認してみる 参照)
また、
このようなリアルな例以外にも
例えば
ハリウッド映画のディザスタームービー等で←
災害時、ガソリンや食料を購入する際、
主人公がクレジット(キャッシュ、デビット)カードをレジに差し出すと
「なんだこりゃ。今の状況でこんなの使えるわけねぇだろ。現金以外はお断りだ」
と店主が銃を片手に凄む、みたいなシーンがあったりします笑。
アメリカを始めとして
日本以上にキャッシュレス化が進んでいる国……でありながら
災害時の対策がじゅうぶんではない場合、
このようなことが起こり得るのは前もって予想される、ということでしょう。
ということで
「災害時でも問題なく機能しうるキャッシュレス決済の仕組み」を創らない限り、
現金払いと同様に「みんなに受け入れられるキャッシュレス決済」が拡がることはない、と考えられます(特に日本など災害が多い国においては)。
しかしながら
そのような場合(災害や事故等で電力や通信網が喪失している状態)でも、問題なく機能するであろうキャッシュレス化の形は、既にこのブログで提唱されています。
ここであらためて、その形をまとめてみると
・マイナンバーに生体情報を紐づける
・その生体情報を銀行が利用し、銀行口座と生体情報を紐づける
・すべてのレジやATM(これまで現金が取り扱われてきた場所)に「生体情報読み取り装置」を設置し、支払いや現金の引き出しをカードレスに「生体情報のみ」で行う
・非常時用の乾電池式レジスター(取り引き内容記憶型)を普及させる
等といったものとなります(非常に簡潔化したものなので詳しくは各エントリを参照してください)。
ここで挙げられたものは
ほぼすべて現時点において機械的にもプログラム的にも問題なく稼働する現物が存在しています。
(乾電池駆動式のレジは既にありますが「取り引き内容を記憶できるもの」はまだないかと思われます……。取り引き内容を記憶しておくのは、電力・通信網が破断している場合、その都度口座内容を更新できないため、それらが復旧した後、まとめて口座に反映させるため、です)
新たに何か難しいものを開発する必要がない、ということから
既存のものを組み合わせるだけで
「事故や災害等で電力や通信網が喪失している状況においても、問題なく稼働するキャッシュレス決済の仕組み」が、あっという間に完成します。
さらに、
この仕組みの優れた点として
急な災害時「着の身着のまま」 避難したような場合において
「サイフもスマホもキャッシュカードも通帳も持ってこれなかった……」
というような最悪な状況にあっても
「生体情報のみ」で支払いやお金の引き出しができる、ということが挙げられます。
これは
キャッシュレス決済のシステムとして
・スマホを使った決済
・キャッシュ(デビット)カードを使った決済
といった形を
大きく引き離す優位性を持っている、と言えるでしょう。
というのは、
スマホやキャッシュカードといった「モノ」
QRコード等、なんらかの情報を読み込む「カメラ」
それらデバイスを動作させる「電池」
などといったものの状態を気にせずに決済が行えるからです。
例えば……
スマホを使ったキャッシュレスシステムでは
スマホ本体、カメラ、アプリ、電池、通信等、すべての機能が正常に働いていないと支払うことができなくなります。
このことは
災害時等、特に故障が発生しやすく、電池の充電もできにくいような状況にあっては、その信頼性が大きく疑われることとなります。
これに対し、
生体情報を使ったキャッシュレスシステムでは
「自分」が
キャッシュカードやスマホの各支払い機能の代わりとなるのです。
このことは
非常時における安心感だけでなく
日常における利便性といった面においても
他の決済システムを凌駕していると考えられます。
なぜなら
現金はもちろん、スマホもカードも一切必要なく
「自分だけ」で決済できる複合的な(キャッシュ)レスシステムが完成するからです。
それは
キャッシュレスだけでなく
スマホレス、カードレスに
「自分の体を使った生体認証だけ」で
「モノ」と「口座内のお金」の直接的なやり取りを可能にするのです。
………
不思議な、といったらいいのか
印象的な、といったらいいのかよくわかりませんが
巡り合わせ、というようなものなのでしょうか、
9月4日に強烈な台風、9月6日に大地震という間に挟まって
9月5日、新しいキャッシュレス決済のサービスが始まることが報道されました。
(日経新聞 2018年9月5日 より)
中国で普及している「Alipay」というQRコード決済を、旅行等で訪日している際もそのまま使えるようにしたサービスとのことで、厳密には日本向けということではないのかもしれませんが、スマホを使ったキャッシュレス決済のひとつとして今後注目されることになるかもしれません。
ただ、
日本において
今回(もしくは以前に)被災され、
大規模な停電の中にあって
アプリどころか通話のための電源を確保するのにも苦労したような人が
「モバイルデバイスを使ったキャッシュレス決済システム」を支持するものなのでしょうか?
災害時におけるさまざまな懸念をほぼ払しょくできるキャッシュカード式、もしくは
そういったカードさえ必要ない
生体認証式キャッシュレス決済こそが
次世代のシステムとしてふさわしい、とSF的に言及して今回の更新を終わりにします。